今回ご紹介するのは、長崎県西海市にある「長崎バイオパーク」です。
約40年前に、長崎の山を自然のまま生かす形で切り開いて誕生したこの場所では、様々な動物たちが檻や柵がない環境で自由気ままに暮らしています。そこに人がお邪魔するという普通の動物園とは少し変わった展示方法をしています。
今回は広報担当の神近さんに長崎バイオパークのコンセプトや、動物たちについて、デートスポットとしての楽しみ方についてなどお話を伺いました。
自然そのままの姿で暮らしているかわいらしい動物たちに会いに行きたくなること間違いなしのインタビューです!
神近さん:長崎バイオパークは「zooっと近くで触れ合える」をテーマにしています。開園当初から長崎の自然を生かしながら動物たちが住んでいた環境をできる限り再現して作られました。
放し飼いに近い形で飼育しているので、園内を歩いていると突然動物たちと出会うことが多く、観るだけでなく触ったり、餌をあげたりすることで、より彼らについて知ることができますし、臨場感もあって楽しさも倍増されるかと思います。
編集部:日本ではそもそも野生の動物と接することが少ないので、偶然に出会えるというだけで魅力的に感じますが、その中で餌をあげられる点はとても興味を惹かれます。
自然の中でリラックスして暮らしている動物たちはテレビなどでしか見たことがないので、実際に目の前で見られるとテンションも上がりそうですね。
神近さん:現在長崎バイオパークとなっている場所は昔大きな1つの山だったんです。
長崎の自然が詰まった山を切り開いて動物園を作り、出来上がった環境に合った展示場所をそれぞれ決めるようにしました。その結果動物たちも元々住んでいた環境に近い中でストレスなく生活を送ることができるようになり、本来の生態系に近い形での展示が可能になったんです。
例えば園内ではコンゴウインコという鳥も展示しているのですが、彼らが行きたい場所に自由に行くことができるので、たまに展示場にいないことがあるんです。お客さんから「逃げていますよ!」と報告いただくんですが、それも動物たちの意思なので尊重しています笑。ただ当然ですが園外には逃さないように細心の注意は払っています。
編集部:展示場のプレートにコンゴウインコと書かれているのに、中に何もいないという状況はシュールですが、動物たちが自由気ままに暮らしている証拠ですね!
神近さん:当園で1番の人気ともいえるのがカピバラです。わざわざ県外から年に数十回訪れたり、海外から観にいらっしゃる人もいるくらいの人気となっています。場内は広く、14頭のカピバラとふれあったり餌をあげたりすることができるんです。
また季節ごとに展示方法も変えており、夏のシーズンはカピバラにスイカをあげたり、冬のシーズンは露天風呂を用意したりストーブを置いたりしています。
カピバラは暖かい地域で過ごしている動物なので、露天風呂やストーブが大好きなんです。冬に寒い館内でストーブに当たっていると、カピバラたちも寄ってきてとてもかわいいですよ。
編集部:それはとてもかわいらしい光景ですね。寒い時にストーブに当たりたくなるのは動物も人間も一緒ですし、ともに暖をとるとより仲良くなれそうですね。県外や海外からのファンが多いのも納得です!
神近さん:カピバラは元々警戒心が強く臆病な性格なんです。ですが開園時からカピバラを飼育しており、当園でスタッフやお客さんと仲良く過ごしたカピバラの子孫が今のカピバラたちなので、人とふれあうことにとても慣れているんです。
編集部:カピバラは人懐っこいというイメージを持っていたのですが本来は臆病な性格であることを初めて知りました。長い歴史の中でできる限り自然に近い形でカピバラとふれあえるように試行錯誤した結果、人懐っこい性格になっていったのですね。
神近さん:動物園関係者が長崎バイオパークに来て1番驚くのがクロキツネザルの展示方法です。
彼らも放し飼いにしているのですが、このような展示方法を取っている場所は海外でもほとんどなく、ここまで自由な姿を見られるのは彼らの故郷のマダガスカルのみかもしれません。
編集部:自由な展示ができるのは見る人にとってもクロキツネザルにとっても素晴らしい環境ですもんね。でも逃げ出したりすることはないんですか?
神近さん:園内にいると餌がもらえるので、彼らにとっても逃げ出すメリットがあまりないのと、群れで生活する生き物なので群れ全体で逃げ出すようなことがない限り、その可能性はほとんどないんです。
レーズンをあげることができるので、ぜひ手に乗せてクロキツネザルの顔の前に持っていってみてください。するとあなたの手を取って顔の前に持っていってレーズンを吸い込むようにして食べるんです。この姿はとても可愛らしく、皆さん写真を撮ったりしてとても盛り上がります。
編集部:お話を聞くだけでもその様子が想像できて胸がキュンとしてしまいました笑。このような姿が見られるのも、長崎バイオパークができる限り近くで観察できるような環境を整えているからこそといえますね。
神近さん:全部で23頭のオオカンガルーがおり、こちらも展示されているエリアの中に入れることができます。出産の時期には赤ちゃんを育てているカンガルーもいるので、観察しているとたまにお腹の中から赤ちゃんが顔を出すこともありますよ。
またメスを取り合って喧嘩する姿を間近で見ることができるのも当園ならではかもしれません。カンガルーはメスを取り合う時や危険を感じた時しか喧嘩をせず、近づきすぎない限りは攻撃される心配はないので安心してふれあってもらえたら、と思います。
編集部:SNSの動画などの影響かカンガルーは凶暴な印象を持っていたのですが、実際は人間を攻撃することはあまりないんですね。
カンガルーのお腹の中の赤ちゃんの姿はTVを通じてしか見たことがない人がほとんどだと思うので、それを近くで見てふれあえるのは貴重な体験だと思いました。
神近さん:国が害獣指定しているアライグマなどは放し飼いができないので、周囲をアクリル板で囲んで、互い違いになっているアクリル板の間から餌をあげられるようになっています。
お客さんが来ると彼らはアクリル板に張り付いて立ち上がりながら餌を待っており、この姿はとても愛らしいです。
実際に触ることができないにも関わらず、アライグマの餌はカピバラやリスザルに次いで3番目くらいに人気なことからも、ファンが多いことがわかると思います。
編集部:害獣に指定されているとは思えないくらいのキュートさですね。アクリル板に張り付いている姿はさらに可愛らしいです。動物とふれあうのが少し怖い人などはまず、アライグマに餌をあげてから園内を回ってもいいかもしれませんね。
神近さん:ミーアキャットの群れも当園では放し飼いになっています。よく「アンデス広場とラマの岩山」に巣を作って勝手に住み着いていることが多いです。彼らは群れ全体で行動するので、いつも園内を大移動しながら様々な場所を巣にしているんです。
たとえばある日は羊が展示されているエリアに巣を作っているかと思えば、その別の日にはカピバラの展示されている場所に移動していて……、ということもしばしばです。また移動先でその動物たちとどのような交流をしているのかを見るのもとても興味深いです。
編集部:他の動物園の放し飼いとは次元の違う放し方で少し驚いてしまいました笑。でも行った時どきによってミーアキャットの住処が毎回変わっているのはとても面白いですし、何度も園内に足を運びたくなりますね。
神近さん:バイオパークの入場料とは別料金になっているのですが、園内に建てられたお家と庭のスペースで1時間動物たちとふれあうことのできる施設がPAWです。
中にはインコ、モルモット、チンチラ、イヌ、ネコ、ウサギ、フクロウ、ミミズクなどいわゆるペットと呼ばれるような動物が30~40種類飼育されています。
編集部:一般のペットの基準よりかなり広めで、聞いているだけでテンションが上がってしまいました笑。
普段あまりふれあうことのできないような動物もいてこれだけの動物たちと500円でふれあえるのはとても魅力的だと思いました。
神近さん:昆虫館では季節ごとに新しい企画展を開催しています。夏場は「世界のカブト・クワガタ」展をやったり、冬場は「キラキラ光る昆虫たち」展をやったりしました。
特に「キラキラ光る昆虫たち」展ではオオゴマダラという蝶の金色のサナギをオーナメントとしてクリスマスツリーに展示するなどした結果、大盛況でした。本物のサナギなので、タイミングが良ければ羽化するところが観れたのも人気のポイントでした。
編集部:日本では見られないカブトムシやクワガタムシを見たり、キラキラした動物たちを見たりするだけでも楽しめるのに、その昆虫の特徴を活かした展示の内容を考えられていて素晴らしいと思いました。
動物だけでなく昆虫たちの展示も行なっており、本当に「バイオ」に着目した動物公園なのですね。
神近さん:フラワーパークでは、大きなドームの中にたくさんの熱帯の植物たちが生い茂っており、季節に応じた様々な花も毎シーズン植えているんです。
ここでも自然のままの姿を展示するため、300羽の蝶が舞っていたり、木の枝にオオコウモリが止まっていたり、ナマケモノが木に捕まっていることもあります。
編集部:フラワーパーク自体が本当に熱帯地方を再現しているんですね。直接熱帯地方に行くことは大変ですが、長崎バイオパークに行くだけでそれを体感できるとは思いませんでした!
神近さん:園内には4店鋪のレストランがあります。ちょうど順路を三等分するような形で点在しているので、園内を歩き疲れたり、少し休憩したいタイミングでジュースを飲んだり、ご飯を食べたりできるようになっています。
長崎名物「蜂の家」のカレーや、五島列島の鯛の出汁をとったカレーもオススメです。他にもトルコライスや、佐世保バーガーもありますよ!
編集部:お腹が空いた時にその場所でいちいち園内の入り口まで戻らなくてもいいのはとてもありがたいですね。動物園でここまでご当地の名産品をたくさん揃えているレストランがあるのはとても珍しいように思います。
神近さん:毎週のようにお二人でカピバラを見にいらっしゃるカップルの方がとても印象的です。しかも1組ではなく数組もいらっしゃるんです。おそらく付き合って時期が経っても動物と一緒にふれあっているとそれだけで楽しめるんだと思います。
むしろペットを飼っているような彼らにとってある種の日常になっていて、我々も毎週会いにきてくれるのでとても嬉しいです。
編集部:毎週推しに会いに来るようなイメージなのかもしれませんね。二人が上手くいっている時もそうでない時もカピバラたちに会いに来るというのは、カップルと長崎バイオパークもとても素敵な関係性で成り立っているのだなと思いました。
神近さん:全体を通して全てカップルにオススメできるような作りになっているので、どのような回り方をしていただいても楽しめると思います。
例えばリスザルなどは肩に乗ってきて餌をねだったり、ポケットを探ってお客さんのお菓子を取っていったりするんです。おそらくそれを体感するととてもテンションが上がると思います。このようなある種の吊り橋効果のような体験を様々なエリアで体感できるのは当園の楽しみ方の一つでもあります。ぜひ動物との距離感を測りながら楽しんでいただければと思います。
編集部:吊り橋効果と聞くと、それこそジェットコースターなどでしか体験できないような気がしていましたが、それを動物たちとのふれあいの中で感じることができるのはこの展示方法ならではですね。
神近さん:園内全てが思い出に残る写真を撮れるスポットとなっています。基本的に檻や柵がないので、どの動物とも3ショットを撮影できるんです。
また動物たちを展示している場所自体も撮影スポットにぴったりかと思います。たとえば「インカの石積みとエスパシオの丘」では景観を損ねるような人工物はほとんどないため、本当の遺跡に動物がいるような写真が撮れるようになっています。
編集部:動物たちとの3ショットの写真を見返すと、長崎バイオパークでの1日が鮮明に頭に浮かんできそうですね。近づいたり、ふれあったりしても、逃げたり怒ったりしないような形で動物たちを展示できている長崎バイオパークだからこそですね。
神近さん:長崎バイオパークでは気ままに過ごす動物たちとイレギュラーな触れ合いができるのが大きな魅力です。長年多くのお客さんを見てきて、人が動物にふれる時にはその人の性格が出るように思いますし、これは檻の中の動物を見て回るだけではわからないと思います。
動物の気持ちを考えてふれあうことができる人は優しい人だと思います。動物たちとのふれあいを楽しみながら、パートナーの動物への接し方を見ることで、二人の未来について考えたりすることもとてもいいと思います。
編集部:動物とふれる時にその人の性格が出るというのは、その人が動物、つまり相手の気持ちをどれだけ慮れるかということがわかりそうなので、とても共感できました。
このような展示方法をしていることで、二人で楽しい時間が過ごせると同時に今後の二人の行く末まで予想もできるなんてまさにカップルにぴったりのスポットといえますね!
ぜひみなさんも長崎バイオパークで動物たちとのふれあいを楽しんでください!
本日はお忙しい中、ありがとうございました。
住所
〒851-3302 長崎県西海市西彼町中山郷2291-1
電話番号
0959-27-1090
営業時間
10:00~17:00(入園締切 16:00)
定休日
年中無休
公式HP
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